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組織構築における一番のポイント
良くも悪くも「小さな事」から始まる
「いかに不満を出さないような環境を作れるか」
これが組織構築の一番のポイントになる。最終的な退職に至るまでの原因を紐解くと、最初は小さな事がきっかけというのは良く目にする。
この「小さな事」が続くと不満になり、そして退職という形になる。
だいたい不満が発生するケースは次の3つに集約される。
- 業務内容
- 人間関係
- 不公平感
業務内容は、上司と部下が考える業務レベルのミスマッチや、忙しさに対しての報酬(給与、休み、福利厚生)にギャップがある場合が多く、人間関係は、同僚や部下に対して「これくらいは分かっているだろう、当たり前だろう」というコミュニケーションギャップから生まれる。不公平感は評価のバラツキが原因。特に会社貢献度などという言語化や定量化が難しい項目を入れてしまうと顕著に出てくる。
期待値のコントロールが重要
これらは基本的に期待値のコントロールミスによるものである。双方の期待値にギャップがあるがゆえに不満が生じてしまっている状態。言葉にして共通認識にしておけば問題ないが、どうしても自分の価値観フィルターメガネで見てしまうので、「相手も自分と同じ事を思っている、考えている」と思ってしまい言わないことが多い。これがギャップを生み不満が起きる原因の一つになっている。つまり分かりやすく言うと、勝手に期待して勝手に裏切られて勝手に不満を作ってしまっている状態。これらの不満が出来るポイントを言語化によって予め潰しておく事が最重要である。
組織構築における基本的な内容
- 適切な課題設定と共有
- 公平な評価方法(制度)
- 仕組み化された育成方法
- ルールを徹底的に言語化しておく
- 業務効率化
- 採用基準を明確にする
- 上司のありかた
適切な課題設定と共有
人は課題が適切なレベルの時に1番成長する。この時の適切とは、自分の今の能力に対して少し難しいと感じる程度の難易度レベル。ストレッチゾーンと言う事もある。能力に対して難易度が高すぎるとやる気を失い、低すぎると流れ作業になる。その為にやる事は以下の通り。
- まず上司や育成担当は、対象の若手がどのレベルなのかを見極める
- 相手の理解力の確認
対象はどのレベルにいるのか
新人なのか、若手なのか、中堅なのか、ベテランなのかによってその人のレベルは違ってくる。新人から若手の内は業務を覚える事が中心になる。そのため業務内容リストを作成して進捗を確認する事なんかも有効。中堅やベテランは育成だったり売り上げ目標だったり、マネジメント業務だったりする。ここをミスるとムチャ振りの職場、退屈な職場とのレッテルが貼られ不満に繋がる。
相手の理解力
また自分が話した内容に対して、どれくらい理解しているのか、文章(行間)は読めるか、文章は書けるかどうか(主語と目的語の関係、接続詞の使い方が間違ってたりする事がある)を確認する。特に理解度の確認は重要。特に若手は分かっていなくても、分かったと答える事が多い。具体的には分かった事を自分の口から話してもらうのがいい。ここの判断をミスるとお互いの認識にギャップが発生して不満に繋がる。
公平な評価方法(制度)
前提にあるように、まず組織に不満を作らせない環境整備が重要で、評価に関しては不満が最も出やすい項目の一つである。評価は報酬に直結するために公平性が最も重要である。この公平性が保たれていないと組織に不満が発生する。また評価は半年、または1年に1回しか行わないために1回の不満がずっと続くことになる。公平な評価をするポイントは以下の通り。誰から質問されても納得させることが出来るような評価方法にする事。
- 評価は厳正に(お情け評価は絶対に入れない)
- プロセスは評価対象外にし、あくまで結果で判断する
- 客観的な評価基準を作成し共有しておく
- 上司判断のような曖昧な評価基準は入れない
- 昇進や昇給のアップ方法を明確にしておく(言語化しておくのが望ましい)
仕組み化された育成方法
この育成方法とは新入社員から若手卒業までに行う育成の事を指す。つまり基礎を覚えてもらう時期になり、この時期の育成方法を仕組み化するにあたって3つのポイントがある。
- キャリアプランが明確かどうか
- モチベーションに左右されない育成方法かどうか
- 対象(若手)の居場所が確保されているかどうか
キャリアプランの明確さ
育成方法(キャリア)が明確になっていないと将来への不安が生まれる。いつまでこの部署でやるのか、どうすれば次のキャリアを歩んでいけるのか。ここが明確ではないと将来への不安が生まれ、そして不満になっていくので明確に言語化しておく事。人は基本的に自分にメリットが無いと行動を起こさないという原則を理解しておく。この時期のメリットは部署変えによるスキルアップだったり、キャリアプランだったりする。
モチベーションに頼る危うさ
モチベーションに左右されない育成方法については、モチベーションは様々な理由で上昇したり下降したりする事で一定ではないからだ。具体的にはドーパミンやノルアドレナリンの分泌が関係しているが、これらは常に出ている訳ではない。ストレスや他の要因で出たり出なかったりする。この書籍に詳しく記載されているので、一読してみると良い。
モチベーションの大小は業務以外の要因も大いに関係するため(例えば恋愛状況や、冠婚葬祭、育児など)、会社や上司が管理するのには限界がある。これらの周辺情報を考慮するのは問題無いが、要素として入れるのがNGな理由がこれである。これらは基本的に感情に紐付いているので、感情に関係無く育成(覚えて)いける仕組みを作る。
居場所の必要性
若手に限らずだが、仕事していく上で1番堪えるのが居場所が無い事だ。言い替えると、必要とされていない状態とも言える。これは上司や育成者が意図せずとも、若手が勝手にそう感じてしまう事があるから注意が必要だ。これの解決方法は日々の声かけが重要。声をかける事で相手の存在を認める事にもなっている。ただし、これも1日1回は声かけるなど、定量的に評価出来る形で管理しないと、気がつくとお気に入りだけに声を掛けているという事態も多い。
定期面談(1on1)について
居場所作りにおいて定期面談は有効である事が多い。面談の主な目的は主に次の2つ。
- 自己肯定感の向上
- 承認欲求のコントロール
適切な課題を設定し、定期的に進捗を振り返る(フィードバックする)事で達成感や自己肯定感を上げる事が出来る。課題を達成したら認め承認欲求を満たし、未達の場合は自ら改善点を考えアクションプランに落とし込み実践してみる事でPDCAサイクルを自分で出来るようにする。承認欲求が満たされず自己肯定感が低いと、新しい事へのチャレンジが無くなり変化を起こせなくなり組織やチームが停滞する事が多い。この辺りをコントロールしていく。ただ以下の点に注意する。
- 面談の期間は隔週で実施するのがベスト
- 1回あたりの面談の時間は30分
- 面談では聞く事をメインにする
- 必要以上に誉めない、認めない
- 次回の課題や改善点は相手の口から宣言してもらう
- 相手のステージによって内容は変わってくる
隔週で実施する理由は、1週間だと早すぎるのと1ヶ月だと課題を失念してしまってる事も多いため。自験例だと隔週がベストだった。面談時間は30分より短いと必要な情報が聞き出す前に終わってしまう。これ以上長いと不必要な会話も発生し非効率的になる。経験上、長くても1時間までだった。
聞く事をメインにする理由は、相手の価値観を探るためと、相手は基本的に話したがっているため。話しを聞いてもらう事で自分の存在を確認してもらう。アイスブレイクを実施したら、相手に自慢してもらう様なイメージで聞く。この時の聞く姿勢は重要で、相手の目を見ずにPC入力していると聞いているのか不安に感じ、話してくれなくなる。相手の目を5分に1回は見て、相づちを必ず入れる。この時の相づちの注意点は、決して否定入れない事。でも、それって・・と始まると、相手は話す気がなくなる。
誉めについては、基準に達していない時まで誉めてしまうと、相手の当たり前の基準が下がってしまうので避ける。もちろん目標や課題に対して大幅に結果を出した際には誉めたり認めたりする。これは期待値コントロールにも関係してくる。
また次回の課題や改善点を相手の口から宣言してもらう事で、自分事になり目標や課題に対してのコミット力が違ってくる。
内容は相手のレベルによって指導(ティーチング)とコーチングの割合が変化する。
新人はティーチング ≫ コーチング
若手はティーチング > コーチング
中堅はティーチング ≦ コーチング
ベテランはティーチング ≪ コーチング
中堅のレベルにまで持って行くのが目標。
メンター制度について
メンター制度はケースバイケースで作っても良いが、必須という項目ではない。メンターを置くタイミングは組織(グループ)の人数が多くなり、上司の抱える部下数が15名を超えてたあたりから。これ以上は時間的に見きれなく上司の時間が不足するタイミング。メンターをやるメリットとしては以下の2点。
- 上司が把握できていない情報や変化をキャッチする事ができる
- 部下の居場所を作れる
ここでの注意点は、メンターからの情報についてバイアスがかかっているかどうかを判断する事。メンターと言っても経験が不足している場合は、お気に入りの部下には目をかけるし情報を変に解釈して報告してくる。ここを鵜呑みにすると判断を誤るので注意が必要。
見極めのコツは、それは「客観的事実なのか、その人の意見なのか」という事。意見ならバイアスがかかっている可能性が高い。
また部下により近い存在として世話焼きする事で、特に若手の居場所を作れる事もメリットになる。それに伴い若手からの情報も聞き出せる点も大きい。特に若手退職の原因の1つに人間関係があり、これは疎外感などのなじめない(居場所が無い)事が原因の事が多い。
一方でメンター制度のデメリットは、メンター適任者の条件が必要な事と、通常業務と並行して行うので時間的に厳しい事が多い事。上司がメンター業務を兼任する事も可能だが、距離が近くなりすぎるという危険性もある事は考慮しておかなければならない。
ルールを徹底的に言語化しておく
別の言い方をすると曖昧さの排除。いわゆる「それくらい言わなくても分かるでしょ(常識でしょ)」を無くす事とも言える。ここを言語化しておく。これをしないと、個々での行動や判断にムラが生じ、それを指摘しても「言われてないし、教わってもいない」という返事が来てしまう。これは当然不満に繋がる。しかし逆に言うと、全て言語化をする事でグループ内の行動に一貫性を持たせる事が出来るようになる。
ここでのルールの言語化とは就業規則に落とし込まれている内容から、現場でのローカルルールや暗黙ルールも該当する。主な具体的な内容については以下がある。
- 給与、昇進、昇級の条件
- キャリアプラン(キャリアパス)
- 休みの取り方(公休、有給など)
- 現場にある暗黙のルール
- トイレや小休憩の取り方
一定のルールの下で動いていて、再現性を求められる事案は全て言語化する。これはゴミ捨てや日報の書き方まで全てが対象になる。小休止の取り方も記載する。これは喫煙者と非喫煙者の小休止の取り方に違いが出てきて不満に繋がるため。双方の認識のズレを生まない事が重要である。
離職防止
離職は基本的に自分の(理想の)イメージと現実にギャップが生まれて、それがある程度継続した時に発生する。この時の期間は個人差があり、数日の場合もあれば年単位の事もある。このギャップには上記のルール言語化の項目と共通する部分が多い。
これらに共通するのは入社前後のギャップ。採用の時に変に自施設を良く見せてしまうと入社後のギャップが大きくなり早期離職に繋がるので注意する。ありのままを見てもらうのは重要だが、改善点を放置しておくのとは意味が違うので注意する。
業務効率化
実は結果に直結していない業務というのは多くある。その中で意義を見いだせない業務を続けるのは不満に繋がる。見分け方は、その業務内容が「客観的データに基づいて必要だと判断されています」といったような言語化ができるかどうか。つまり業務内容を因数分解して要素を洗い出す事。この中で結果に繋がっているか、結果への寄与しているか等を確認し、説明が出来るようになる。そして優先度が低く、結果に直結していない業務は止める。
これが出来ないといつまでたっても業務が減らず、労力だけが必要になる。いわゆる生産性が低い状態である。
採用基準
採用については特に重要である。自社の方針と相手の価値観がマッチしているかどうかである。優秀な人で価値観が違うよりも、並レベルでも価値観が一致している人を優先的に採用した方がその後の定着率は良い事が多い。そのためにやるべき事は以下の通り。
- 自社の方針を言語化しておく
- 自社が求めている能力を明確にする
- どんな価値観を持っているかを確認出来る質問リスト作成
- 人件費の確保
自社がどんな能力を求めているのか、どんな価値観(企業理念)なのか、どんな環境を提供出来るのか、いくら払えるのかを明確にしておく。ここの基準に合わない人を採用しても、遅かれ早かれ退職していく。あれもこれもで採用していると、結局全員残っていないという事も往々にしてある。
一般的な話していうと、知識ベースの優秀さよりは好奇心が高い人の方が、入社後の延びは大きいケースが多い。面接時に事実や経験ベースで聞くと相手の価値観や好奇心などの能力が判断出来る。
昔のイメージでのリクルートは危険
また、今は就職氷河期のように、マルチタスクが出来る人間が時給900円で採用出来る時代ではない。やはりある程度の人件費は必要で、それが捻出できないのであれば、採用相手への期待値を下げて、その人達でも回るような仕組みを作るか、既存の業務内容を効率化していくしかない。ただ前者は予期せぬエラーは発生する事が多くハードルは高い。後者は小さな事を少しずつ実践していくような努力が必要である。
上司のあり方
言い替えると上司の仕事や役目とも言える。これは以下の通り。
- 上司不在でも仕事が回る組織を作る
- 上からの指示を自分の言葉に翻訳して部下に落とし込む
- 現場からの情報を吸い上げる仕組みを作る
- 管轄グループの責任を自覚する
特に重要なのが上からの指示を自分の言葉にする事である。以前と比較すると社内ツールが発達した為にトップと現場のコミュニケーション方法にロスが少なくなった。そのため上からの指示を伝言のように伝えるだけの管理者は不要になってきている。ただ上からの指示はたいてい抽象的である事が多く、それを現場の言葉に翻訳する役割が必要で、上司(中間管理職)の役目はここになる。上と現場を繋ぐ唯一の役職である事を自覚する。また上に対して意見を言う事も時に必要になる事もある。ただし会社組織である以上、最終的には上の判断には従う事。
上司不在でも回る組織とは、権限委譲が適性に行われている事と組織の方向性が定まっている事、マニュアルが整備されている事が必要条件。適切に権限委譲が行われていないと現場で判断して実行する事が出来なくなる。この現場での判断も組織の方向性が決まっていないと判断軸に一貫性が無くなる。そしてマニュアルは最低限の能力の人材でも最低限に仕事の質を担保するのに必要になる。これらを合わせて組織を仕組み化する。上司はある段階でプレイヤーからマネージメントに移行する時が来る。その時に個で成果を出す事からチームで成果を出す事に意識をシフトする事が必要。
不満を作らない環境が出来るとどうなるか
居場所確保のベースが出来る
組織が崩壊する原因の1つに人材不足がある。この人材不足が起きる原因には「小さな事」が最初である事は話した通り。そしてこの小さな事は期待値のギャップから生まれる事がほとんど。
つまり誤解を恐れずに言うと、相手に期待しなければその問題も起きないという事でもある。
しかし相手に期待しないというのは簡単な事ではなく、部下や上司、同僚といったラベリングをしてしまう以上、その役職にあった働きを無意識に期待してしまうもの。そのバイアスを外すための仕組みは上で話した通り。
では「小さな事」が起きないとどうなっていくのか。
実は人が定着するには、もう1つの事が必要で、それは「貢献感」である。
組織やチームへの貢献感
「小さな事」が起きないと、すくなくとも組織に不満は無いという状態ではある。この状態の時に「組織やチームへの貢献感」をプラスすると人は定着する。
つまり「他人から必要とされている」感覚が必要なのである。これは顧客からのフィードバックが1番効果的で、顧客が誉めていたという事実があったら積極的に共有していくべきである。不満が無くても「必要とされている感」が無いと、人は存在意義を見いだせない事が多い。
この「貢献感」を得られるには、かの有名な「心理的安全性」が必要不可欠になる。
一般的に「心理的安全性」を得るためには対人リスクを排除する事が必要だと言われている。対人リスクとは次の通り。
- 「無知」だと思われる不安
- 「無能」だと思われる不安
- 「ネガティブ」だと思われる不安
- 「邪魔」だと思われる不安
つまりこれらは、先述の「小さな事」そのものなのである。
この「小さな事」がなくなり、「貢献感」が得られると、次のようなステップになる。
- 「不満が無い」に「貢献感」が加わると「居場所」が出きる
- 「居場所」に「適切な課題」が加わると、「自信」が出る
- 「自信」に「困難」が加わると「勇気」が出る
- 「勇気」に「自分の価値観」が加わると「覚悟」になる
- 「覚悟」が出来れば、あとは放っておいても成長してくれるようになる
これは10年程度人材育成をしてきて、感じた事でもある。
まとめ
「小さな事」が起きない環境作りと「貢献感」
組織構築をする上では、特に上記2点は重要なので、退職率が高い事で悩んでいる人は、参考にしてもらえれると良い。